二木島町は三重県熊野灘に面した200人足らずの人口の70％が65歳以上というお年寄りの町である。そこにある診療所が少し誇らしいと番組は始まった。医師平谷一人さんが、看護師二人事務員一人と切り盛りする。大病院の副院長を勤めていた平谷医師は、50歳の時に故郷熊野市の求めに応じ妻の京子さんとこの診療所に移って25年になる。この間、看取った老人の数は150人、日々先生を頼りに診療所を訪れる人たちとの会話が暖かい。今では奥さんを介護する身でもあり、今年になって自らの心房細動の手術で4日間の休診もしている。老いをどう生きるか、どう手を差しのべられるかを4年間丹念に追い続けたNHKスペシャル「せんせい！おかげで生きとられるわ」（6/2）は、閉鎖を余儀なくされる診療所の少なからざるをもにじませて秀逸であった。