情景「プールサイド」

2021/05/06

初夏への誘い

朝夕の気温の下がり方がだいぶおだやかになって、街中ではコートを脱ぎ、日中半袖の人も見かけるようになりました。そんな季節感を敏感に捉えて、木々が野草が芽吹き葉を広げ花を咲かせ実を付けるものが出るまでになりました。八十八夜も過ぎて、夏間近ですね。

 

(以下、柴橋さん投稿です。)

エノキの「榎」は、夏に日陰を作る樹を意味する和製の国字だそうです。正門脇のその木陰に入ると、沢山の実が目につきます。エノキの花が咲いていた3月下旬時には雄花に比べて目立たない雌花がこれほど沢山咲いていた印象はなかったので、これは意外で驚きです。また、風まかせであるのに、こんなに沢山結実することに改めて驚きました。

(2021/04/01「お花見から新緑へ」の榎をご覧ください。)

灰色の黴の様だった冬芽から葉と共に現れた花芽は、紫色の可愛らしい蕾を経て、薄紫色の花となりました。正門から真っ直ぐ進んだ芝生中にあるセンダン(栴檀)の華麗な変身です。紫色の10本の雄蕊が筒を形成して、花粉を込めた黄色い葯が内側に収まっています。咲き始めなので今はまだ花数は少ないですが、これからの数日で花盛りになることでしょう。

(2021/04/08「春を待ちわびた花々」の栴檀をご覧ください。)

プール棟の南に小さな葉をこんもりと密に茂らせているワイヤープランツに、3ミリ程度の小さな薄黄色の花が沢山咲いています。敢えて和名を作らずに英語名をそのままカタカナにしているのは園芸商品だからなのでしょうか。

旧第一病舎の西側に、ミズキ(水木)の高木が、枝先に多数の白い花を密に咲かせています。春先に枝を切ると水が滴り落ちることが名前の由来とか。箸やこけし用材としてよく使われています。

白い細い花弁が4枚、雄蕊も4本で、花弁と45度ずれる様にして大きく張り出しています。雌蕊は中心に1本。花弁も雄蕊も散った花では、緑色の子房が膨らみ、残った雌蕊とともに、ラテン音楽楽器のマラカスの様な、或いは、新体操で使われる棍棒の様な形となっています。

ツルウメモドキ(蔓梅擬)は雌雄異株です。雌花に続いて、旧第一病舎の南東にようやく雄花を見つけることが出来ました。黄緑色の小さな花です。

(2021/04/22「芝に咲く花々」の蔓梅擬をご覧ください。)

ユズリハ(譲葉)は、春に若葉が出た後、前年の葉がそれに譲る様に落葉することから、その名で呼ばれています。雌雄異株で、写真は旧第一病舎近くに咲く雄花です。花弁も萼片もなく、紫褐色の葯だけが目立つ剥き出しの雄蕊が6個程度集まっただけの花が集団を成して下から上へと咲いています。

雌花もまた花弁はなく、先端が二つに別れて反っている雌蕊だけといった風情で、葉の腋から顔を出しています。この状態でもこれが花かと思ってしまいますが、まだ雌蕊も子房も発達していない初期には、これは何?という気になります。風媒花には飾りは必要ないということなのでしょう。

シュロ(棕櫚)は、日本でも自然に育つ唯一のヤシ科植物です。樹皮はシュロ縄や箒や束子(亀の子束子です)等の実用品にも利用されていますね。旧第一病舎の西側にシュロの雌株が花を咲かせています。

拡大して見ると、あまり花らしからぬ球状の形の中から3本の雌蕊が出ているのが判ります。よく見ると球は一応花弁3枚に別れています。

茅ヶ崎の名前の由来はハッキリとはしていないそうですが、字からするとカヤ(茅)が茂ったミサキ(崎)だったからというのは、ありそうな話です。旧院長室棟の西側で、チガヤ(茅萱)の花穂が春の穏やかな風になびいて光っています。各地の神社で夏越の祓えの際に設置される「茅の輪くぐり」の輪は、チガヤを束ねて作られます。

紫色のブラシの様に見えているのが雌蕊です。チガヤの花穂が赤褐色に見えるのは、この雌蕊の色のせいです。黄色の葯のついた雄蕊より先んじて出現して、自家受粉を避ける仕組みになっています。

ひょうたん池の近くにはユズ(柚子)の白い花も咲いています。夏ミカンの花より少し小振りのような気もしますが、花の外観だけでは区別が難しい様に思います。葉の柄に翼があることと、茎に鋭いトゲがあることが、明確な違いです。思っていたより花の香りが弱いことからすると、本柚子ではなく花柚子なのでしょうか。

(郷の柚子は花柚子です。)

近くにハマヒルガオ(浜昼顔)が咲いていました。この時期の茅ヶ崎の浜辺を彩る代表的な花です。浜辺から実かタネが風に運ばれて来たのでしょうか。

(郷ではこれまで見なかったような気がします。これから徐々に増えていきそうですね。)

待宵草の仲間でありながらも淡紅色の花が、しかも昼間から咲いています。流石に待宵草とは名乗れず、ヒルザキツキミソウ(昼咲月見草)と称されています。雌蕊の先端が大きく十字形になっていることも特徴の一つでしょう。ヤブキリ(藪螽蜥)が花弁を食い千切っていました。

ヤエムグラ(八重葎)が、華奢な茎の稜に並ぶ下向きの小さな棘によって他の植物に寄りかかっています。茎にある節を8枚の細い葉がぐるりと囲んでおり、ごく小さな、2ミリくらいの花が咲いています。カギ状の毛に覆われた小さな球が2つ繋がった果実も見られます。ヤエムグラの名は知らずとも、衣服に容易についてしまうこの果実を「ひっつき虫」として認識している方も多いのではないでしょうか。

梅林の近くにアメリカフウロ(亜米利加風露)が咲いていました。薄紫色で1センチくらいの可愛い花です。名前はずばり北米からの帰化植物でフウロソウ属に属することを意味しています。萼の先に短い突起があることと、葉が手袋のように5つに裂けていて、それぞれが更に切れ込んでいるのも特徴的です。

(フウロソウと言えば、ハクサンフウロ。汗水たらしてあえぎながら登る夏山の路傍にふと見つけては、足が止まり眺め入ります。可憐さが惹き付けてやみません。アメリカフウロもいいですね。)

モズ(百舌)の幼鳥の巣立ちも近いのでしょうか。梅林から哨戒中の白眉のモズ雄です。毎年5月10日から16日までの一週間は愛鳥週間です。

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