情景「プールサイド」

2021/07/01

半夏雨(はんげあめ)

夏至から数えて11日目の7月2日頃からの5日間を半夏生(はんげしょう)といいます。1年を72に分ける七十二候(しちじゅうにこう)の1つ、この頃降る雨を半夏雨(はんげあめ)と言うのだそうです。大雨になることが多いとか。昨夜から少し強めの雨降りでした。雨降り何するものぞとばかりに花が開き、目ざとい虫たちが蜜を貪ります。

 

(以下、柴橋さん投稿です。)

やや緑がかった黄色の沢山の花穂が風に揺れるナンキンハゼ(南京櫨)の姿は、満開のこの時期だけの光景です。つい先日まではあまり目立たない直立した小さな花穂だったのですが、急に大きくなって首を垂れるや、樹全体の印象をも随分と変えてしまいました。

花穂の基部には雌花が咲いています。花といっても、装飾性は一切なく、先が3つか4つに裂けた雌蕊だけですが、その基部の子房はもう膨らんでいます。

雌花の上方、花穂の大部分は雄花が占めています。雌花より遅れて開花しました。こちらも装飾性は一切なく、葯(やく:花粉を収めた袋)をつけた雄蕊が出現するだけなのですが、花蜜を出すのか、あちこちの花穂で蟻が頭を潜り込ませています。花穂が遠目には黄色く見えるのは、雄蕊の先についた葯のせいです。

つい昨日までは殆どの花穂には大量のアブラムシが密集していたのですが、不思議なことに突然姿を消していなくなりました。天敵はテントウムシとその幼虫(写真)ですが、一日で全滅させられるとは考えられません。雄花の開花と時を同じくするのも偶然とすれば出来過ぎた感があります。素人の浅知恵でも色々と推理が楽しめます。

セリ(芹)の花の蕾です。ひとつひとつの蕾は、5枚の花弁が綺麗に畳み込まれています。こんな意匠の点心か和菓子がありそうな …

花弁が徐々に開くと共に、中から雄蕊がゆっくりとほどけてくる様子は、なにか心和む光景です。この時点での花は雄蕊だけの雄花状態です。蟻が頭を潜らせて夢中になっているのは蜜なのでしょう。

二、三日経つと雄蕊は落ち、代わって雌蕊が伸びてきます。こうして花は雌蕊だけの雌花状態に変わります。代表的なシジミ蝶のヤマトシジミ(大和蜆蝶)が雌花状態の花に蜜を求めてやって来ました。どうやら、雄花状態でも雌花状態でも蜜が豊富な様です。蜜腺も別なのでしょうか。

一部の花は、既に花弁も落ち、残った雌蕊だけが突き出ていて、その基部には果実が膨らみ始めていました。

雄花としての性質から雌花としての性質に変わる花は、他にもあります。蔓性で繁殖力が強く、他の植物を覆い尽くし、日光を遮って挙句に枯らしてしまうヤブガラシ(藪枯)もそうした花です。忌み嫌われて花になる前に駆除されてしまう場合が多いのですが、橙色をした花自身は、よく観るとなかなかの魅力ある姿をしています。何よりの特徴は変身の早さです。朝早くに蕾が開いたヤブガラシの花は、午前中は雄蕊を突き出した雄花状態ですが、昼過ぎには先ず花弁が落ち、次いで雄蕊が落ちて、雌蕊が伸びた雌花状態に変わります。

雌蕊だけが残った花の円盤部からは、蜜が溢れ出ています。アオスジアゲハ(青条揚羽)が蜜を吸いに寄って来ました。蜂もやって来ますが、でも、ヤブガラシの蜂蜜と銘打っても売れないでしょうねぇ。

アオツヅラフジ(青葛藤)も、あまり着目されないうちに、あちらこちらで花を咲かせています。雌雄別株で、これは雄花です。雄蕊が6本、花弁も6枚ですが、それぞれ先端が二裂しています。

葉は目立ちますが、花は小さいので見落とされがちですが、こちらが雌花です。雌蕊が6個あります。一つの花から6個の丸い実がなります。

あちらこちらで甘い香りを撒き散らしているのは、トウネズミモチ(唐鼠黐)の花です。在来種のネズミモチに対し、中国原産の外来種なので、そう呼ばれるのだとか。花もよく似ていますが、花の筒の部分が短いのがトウネズミモチです。ネズミとあるのは、花が終わってからの実がネズミの糞に似ているからだとか。華麗な白い花の姿と甘い香りに相応しい名前を、どうして付けてやれなかったのでしょう。ネズミならぬ、蟻が惹かれて来ていました。

藤棚の西北に咲く、特徴的な葉とフウロソウにも似た可憐な花は、ニオイテンジクアオイ(匂天竺葵)という和名を持っているのですが、ローズ・ゼラニウムという園芸品としての名前の方が通りは良いかも知れません。一般のゼラニウムは華麗な花の容姿にはあまり似つかわしくない独特な異臭がしますが、このローズ・ゼラニウムは微弱な芳香をしています。香料の材料としても使われるそうです。

(可憐ですね。)

近くにはノブドウ(野葡萄)が蔓を延ばし、花を咲かせていました。秋に色々な彩りとなる果実が楽しみです。蟻が蜜を求めてやって来ていました。結構強そうな顎ですね。

ヤマトシジミ(大和蜆蝶)が、カタバミ(酢漿草)にやって来ました。同じ様な光景をよく見る気がしていたのですが、ヤマトシジミは、カタバミに生まれ育つことが多いのだとか。このヤマトシジミも、生まれ故郷が懐かしかったのか、仲間に会いに戻って来たのか、はたまた、産卵に里帰りなのか …

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