情景「プールサイド」

2023/03/23

窓の風景

めっきり暖かくなり、更衣室を出た廊下突当り窓のポリカーボネイト波板を外しました。ぼんやりだった第一病舎がくっきりと姿を表し新鮮です。窓下には水仙が咲き、その先で先日柴橋さんが紹介してくださった雀の槍がつんつん出ています。外壁沿いを横に走る藤からは花芽のふくらみが感じられます。葉はまだ茂らずで第一病舎を遮ることはありません。病舎手前の椿が遠目に伺え、北寄りの桜が山桜・大島・染井吉野の順にほころび始めました。窓枠を額縁に第一病舎の四季折々を映し出してくれるこの窓が好きです。庭園の盟主はいつも額縁の中央にあって微動だにせず、穏やかに庭園を統率し続けています。

 

(以下、柴橋さん投稿です。)

下を向いて咲くのが普通のオオマツユキソウ(大待雪草)が、どういう訳か、上を向いて咲いていました。スズランスイセン(鈴蘭水仙)とか、スノーフレークといった名前でも知られています。葯の先に穴が見えます。ここから花粉が放出されるのでしょう。

 

下向きに房になって咲くアセビ(馬酔木)が満開となりました。花芽・蕾の時期が長い花です。満開の花房に近寄ってみると芳香です。

 

同じく房となって咲くキブシ(木五倍子)も満開になりました。これも花芽・蕾の時期が長い花です。ようやくです。

 

キブシの近くにアミガサユリ(編笠百合)がランプシェードの様な花を垂らして咲かせていました。細長い葉が巻きひげとなって相手に巻きついて安定を保とうとします。花は葉腋に出るのですが、この写真の個体ではその葉が自らの茎に巻きつこうとしているので、右側の花は、まるでランプが高いところから吊られているかの様に見えます。

 

花を下から覗き込むと、内側には紫色の網目模様が。「編笠」百合の名の所以です。雌蕊がランプシェードに六角ナットで取り付けられている様に見えますが、このナットがやがて特徴的な形の果実となります。

 

これは普通に上向きに咲く花、ハナニラ(花韮)です。長い雄蕊が3本見えていますが、ほかに短い雄蕊3本が隠れています。近寄るまでもなく、名前の通り、辺りに強烈なニラの匂いを漂わせています。

 

プール棟東壁のクレマチス・アーマンディが低いところにも花開きました。芳香を期待していたのにハズレです。翌日、良い香りがするとSさんが言われるので、再度挑戦。すると甘い香りがするではありませんか。前日は、この写真に見られるように、花弁は開いたものの雄蕊雌蕊は未だ固く閉じていたので香らなかったのではないかと思います。「見ごろ」や「食べごろ」がある様に「嗅ぎごろ」がある様です。

 

春の訪れを象徴する草花の一つ、ヤハズエンドウ(矢筈豌豆)、別名カラスノエンドウ(烏野豌豆)もあちらこちらで開花です。この写真での着目点は、花の下の方の小さな葉に見える焦げ跡の様な、でも何やら水滴が付いている様な箇所(二か所見えています)です。これは花外蜜腺と呼ばれる花の外にある蜜腺で、水滴の様なものは蜜なのです。蜜の出ているところを撮りたいと狙っていたのでした。成功!

 

なぜ花外に蜜腺があるのかについては、蜜に集まる蟻を、花から害虫を追い払うボディガードにさせるため、という説明をよく聞くのですが、理に叶った説明とはとても思えません。多くの虫は飛翔できますから飛ぶことの出来ない蟻では防衛出来ませんし、また、蟻はアリマキ(アブラムシ)と共生関係にありますから、アリマキの害を持ち込んでしまいます。その様子がこれ。アブラムシが茎に針を刺して滋養中です。

 

花外蜜腺を持つ花の例をもう一つ。今が季節の桜です。この写真は、西塀近くの桜ですが、葉の根元の二つの「おでき」の様なのがそれです。右側の蜜腺からの蜜がお分かりでしょうか。この頃毎朝食で桜の蜂蜜をで楽しんでいるのですが、はて、あの蜂蜜も花外蜜腺から得ているのでしょうか。ミツバチが葉に寄ってくる姿は見たことがありません… 花からの蜜の方がイメージ的には良いような…

 

先に掲げたアミガサユリの近くに、こんな一画が。細く赤い柄がひょろひょろと伸び出た先に薄い黄緑。何かの発芽かと思ったのですが、下は苔。えっ、苔の新芽?ヤノウエノアカゴケ(屋の上の赤蘚)が胞子体を伸ばしている情景だと知りました。赤い柄の頭に付いている草色の芽の様なものは胞子嚢だそうです。その多くにはまだ蒴帽(さくぼう)と呼ばれるキャップが付いています。やがて、そのキャップが取れると、口から胞子が放出される仕組みなのだそうです。

 

蒴(さく)と呼ばれる胞子嚢を拡大してみると、こんな構造です。草色なのは胞子が詰まっているからでしょうか。

 

胞子を放出した後らしき姿です。口の部分には蒴歯と呼ばれる開口を調節する構造があるのだそうですが、残念ながらこの写真でははっきりしません。不成功!

 

見上げると飛行機雲が。見られるのは、晴天であるのは勿論のこと、上空の気温が低く湿度が高い日ですから、正に飛行機雲にぴったりの日和です。機体の翼の形状からボーイング787のようです。わずかに見える機体の色からするとANA便でしょうか。

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